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【ジャガイモ(秋ジャガ)の栽培方法と育て方】
ジャガイモ(秋ジャガ)の栽培方法(タネイモ植えから収穫、保存方法まで)をご紹介します。
ジャガイモ栽培は春作が一般的ですが、暖かい地域では夏の終わりに植え付ける
秋作のジャガイモも作ることができます。
ジャガイモの栄養
ジャガイモの栄養は、ビタミンC、ビタミンB1、B2、食物繊維、鉄、カリウム、必須アミノ酸も豊富に含んでいます。
カリウムは体内の塩分調節をしてくれるので高血圧の予防に効果があり、ビタミンCは免疫力を高めます。
特にジャガイモのビタミンCは熱に強く壊れにくいので、加熱調理をするジャガイモに適しています。
栄養満点で健康にも美容にもよい野菜です。
秋ジャガとは
秋ジャガは、夏から秋にかけて栽培します。まだ残暑が続く9月頃に植え付けて
11~12月頃に収穫する秋作という作型です。
春ジャガと同じくらいの約3ヶ月で収穫できます。
秋ジャガは、春ジャガに比べ収穫量はやや少ないですが、ジャガイモのでんぷん価が高くホクホク感が増すという特長があります。
気温の低い時期に貯蔵するので、3ヶ月ほど貯蔵してもほとんど芽が伸びないため(イモが休眠するため)長期間利用できます。
秋作をする夏から秋は、害虫や台風の危険性も高くはなりますが
植え付け時期や適した品種など、秋作のポイントをおさえれば比較的簡単に栽培できます。
秋ジャガ栽培のポイント
・ウイルス病を避けるためにタネイモは購入しましょう。
※タネイモで売っているものは管理されているので安心ですが、食用のジャガイモや収穫したジャガイモは、タネイモとして利用しないこと。病気ある場合に伝染してしまう可能性があります。
・生育の適温は15~20℃前後
・春植えの品種と秋植えの品種があるので、間違えないように注意する。
・栽培に適した期間が短い。涼しくなり始める時期に植え付ける。
(暖地:9月上旬~中旬が目安、中間地:8月下旬~9月上旬が目安)
・そうか病の原因になるため、石灰量は少なめにする。
・暑さで腐敗しやすいため、タネイモはなるべく切らない(大きさによって切る)
・芽かきや土寄せなどの手入れのタイミングを逃さないように注意する。
・茎葉が枯れるまでイモは生長するため、収穫は茎葉が十分枯れてから。
秋ジャガにおすすめの品種
秋ジャガの栽培は、秋作に適した品種を知った上で選ぶことが重要になります。
生育の適温期間が短いため、早い段階で芽出しをすることが大事です。
では、秋作に適した品種を見ていきましょう。
・デジマ、アンデス赤、ニシユタカ、アイユタカ、さんじゅう丸、普賢丸、農林1号、西海31号などの品種が挙げられます。
ジャガイモでも有名な男爵やメークインは秋作には向いていません。
【栽培時期】
秋ジャガの栽培には適した品種、適した時期を守りましょう。
適した品種ではないと、出芽が遅くなり寒さで枯れてしまいます。
暖地は9月上旬~下旬を中間地は8月下旬~9月上旬を目安に植え付けをしましょう。
近年は気温が上昇しているので9月上旬以降に植え付けるなど、地域ごとの気温によって調整してみるといいでしょう。
植え付け時期も早く植えた場合は、暑さでタネイモが腐敗して芽が出ない。
遅く植えた場合は、生育の終盤で寒さによりイモが大きくならない、収穫量が少なくなる。
などの影響が出てしまいます。
植え付け後、2~3週間後に出芽します。
【植え付け前の準備】
タネイモとは植え付けるために作られたジャガイモです。
植え付け前の準備として、タネイモの準備をしておきます。
秋ジャガの植え付けはまだ残暑の残る暑い時期に行うので、タネイモを切って植え付けると腐りやすくなってしまいます。そのため50g以下のタネイモは切らずに植えます。
50g以上の大きいタネイモを植える場合は切りましょう。
切り方は、タネイモの頂部(芽のついた部分)を中心にして縦方向に切断します。(各片に
芽が均等につくように)
切り終えたら、風通しのよい場所で2日程度乾燥させます。
切り口が十分乾燥してから植え付けます。
※植え付けの前に切り口に、じゃがいもシリカ(土壌改良剤)、草木灰、ハイフレッシュ
などを付けると腐敗しにくくなります。
【土づくり】
秋ジャガを育てる土にするためには
・植え付けの2、3週間前に、深さ25~30cm程度で耕うんして日光と空気に当てます。
※深めに耕うんする理由は、ジャガイモが土壌に茎(地下茎)を伸ばして実るので、深めに耕すことで根が伸びやすくなります。
掘り返されることで、深いところに潜む病原菌を日光で死滅させる効果も期待もできます。
・苦土石灰(中性に近い硫酸カルシウムなどでもいいです)を撒いて耕す。
1平方メートルあたり50g程度(pH(酸度)5.0以下の場合のみ)を撒きます。
事前に酸度を計測しておきましょう。
※そうか病の発生を抑えるため撒く量には注意します。
ジャガイモはアルカリ性の土壌を嫌い、弱酸性からアルカリ性(pH6.5以上)の土壌ではそうか病になりやすいので石灰(カルシウム)の使用時は注意してください。
pH5.0~6.0くらいの範囲に調整しましょう。
・植え付けの2週間前に、堆肥を500g、元肥(化成肥料、窒素、リン酸、カリなど)を
60g程度それぞれ1平方メートルあたりに撒いて耕す。
※連作(同じ場所で同じ作物を育てる)すると、そうか病や青枯病などの土壌病害が発生しやすくなるので注意しましょう。
栽培後は2~3年くらいは間隔をあけて輪作(同じ場所に異なる種類の作物を、一定の順序で繰り返し作物を育てる)をしましょう。連作をしたい場合は対策が必要になります。
【畝立て・植え付け方】
・畝は幅50~60cm程度、高さは15~20cm程度で、畝の中央に深さ5cmほどの植え溝を掘ります。(1条植えの場合(条とは畝の列です))
・タネイモを株間(植え付けた間の距離)25~30cmで置いていきます。
・2~3cmほど覆土(土をかぶせる)して、その上に化成肥料(8-8-8)を100~150g撒きます。(1平方メートルあたり)
※その時、イモに直接つかないよう混ぜ込みはしない。
・撒いた上に10cmほど覆土して完了です。
【水やり】
植え付け後、雨が降らない場合は水やりをします。水やりをすることで発芽が早まり収穫量が多くなります。
順調にいけば、植え付けから2~3週間後に出芽します。
【追肥・土寄せ】
イモを大きく育てるために追肥と土寄せ(株元に土を盛ること)をします。
タイミングは、1回目は芽かきの後、2回目は花のつぼみのついた頃(1回目から2~3週間
後)です。
※花が咲く前に葉の色が悪くなった場合は、肥料切れになっているので液体肥料などで
栄養を与えましょう。
芽かき
ジャガイモ栽培では芽かきをします。1つのタネイモから複数の芽が出てくることが多いため、イモを大きくするために必要な作業です。
芽の数はイモの大きさに比例して、芽の数が多いと小さく、芽の数が少ないとイモが大きく育ちます。
やり方は、芽が地上部に10cmほど伸びた頃に生育のいい1~2本を残して、他の芽はかき取ります。
芽かきの際はタネイモごと引き抜いてしまわないように、片手は必ず株をおさえて行いましょう。かき取る芽は横に引き抜くといいでしょう。
花が咲くころにイモが肥大し始めます。花を咲かせたままにしておくと、養分を吸われてしまいます。気づいたら摘み取りましょう。
追肥・土寄せ1回目は、草丈が15cm程度に出芽が揃ってきたら、クワや耕うん機で
畝間(畝の両側)を中耕(生育期間に畝間や条間を浅く耕す)してから
化成肥料(カリ、油かす、草木灰、ボカシ肥などをお好みで)20~30g(1平方メートルあた
り)を軽く混ぜて、5~6cm程度に土寄せをします。
追肥後は必ずしっかりと土寄せをしましょう。
※土寄せをすることで根張りをよくさせる効果があり、大きく育ちやすくなります。
その際に除草もしておきましょう。
イモが地上に露出してしまい根が太陽光に当たると、緑化してしまい品質が落ちて
食べられなくなってしまいます。
そのため土寄せは忘れずにしっかりとやるように注意しましょう。
追肥・土寄せ2回目は、1回目から約2~3週間後に同じ要領で肥料は少なめの10~20g
で行います。
※イモに肥料が直接かからないように注意しましょう。肥料焼けを起こしてしまいます。
緑化とは
緑化すると、その部分(ジャガイモの芽にも)にソラニン、カコニンという天然毒素が多く含まれてしまいます。
有害なので、このようなジャガイモを食べると、吐き気、下痢、嘔吐、腹痛、めまい、頭痛などの症状が出るおそれがあります。
土寄せは、緑化させないことで品質のよい健全なジャガイモに育てるための大事な作業
です。
【収穫】
秋ジャガは、生育していくと茎葉が枯れていきます。
収穫時期は茎葉が黄ばんで枯れてきてからです。(12月頃が目安です)
※寒くなって霜で葉が枯れた部分があっても、イモは生長し続けます。
ですが、秋ジャガの収穫時期は地表面が氷点下になることもあります。
イモが凍結するおそれがあるので、状況によって早めに収穫しましょう。
収穫のタイミングは、なるべく晴れが続いてよく土壌が乾いている日にしましょう。
湿っていないほうが腐敗の防止になります。
雨の日やまだ土壌が乾ききっていない場合の収穫は、湿った土がイモに付いて腐敗しやすくなります。
もし土が湿った状態で収穫をする場合は、湿った土をちゃんと取ってから収穫後に風通しのよい場所で乾燥させましょう。
収穫方法は、イモを傷つけないように株元から少し離れたところにスコップをさして、土ごと掘り上げて収穫します。掘り上げた後にイモが残っていないか土の中の確認をしましょう。
※収穫の際コンテナに入れる前には、イモに腐敗がないか、芽の部分に食害がないか確認して選別しておきましょう。
【保存方法】
収穫し終えたジャガイモは、1~2時間ほど掘った場所で乾燥させます。
その後は日陰で3~7日間ほど、ジャガイモ同士が接触しない程度に離して表面を
乾燥させます。
表面が乾いたらコンテナ、網かご、ダンボールなどに入れ冷暗所で貯蔵します。
適した貯蔵温度は5℃前後です。イモが凍結しないように注意しましょう。
外や気温が低い場合は、ビニールシートや不織布などで覆って凍結しないように対策を
しておきましょう。
暖かくなってくる3月以降に、イモの休眠が明けて芽が伸びてきます。
※収穫したジャガイモは長時間、日に当てないようにしましょう。天然毒素が生成され
食べられなくなるおそれがあります。
タネイモの保存
秋ジャガ用のタネイモは、8~9月に入手できます。
※タネイモとして販売しているものを購入するのがおすすめです。
入手してから植え付けまでの保存は、タネイモが暑さで腐敗しないようにコンテナなどに移して、多湿にならない冷暗所で貯蔵します。適した貯蔵温度は20~25℃です。
定期的に貯蔵しているコンテナ内を確認しましょう。腐敗したタネイモがある場合は、取り除きましょう。
他の健全なイモの腐敗の原因になります。
【病気・害虫対策】
畑は、ちゃんと管理しないと畝の周囲など雑草が生い茂ります。
雑草は、害虫の温床にもなるのでこまめに抜いて管理しましょう。
雑草対策は、普通に抜いて処理をする他に、防草シートを敷く、専用の除草剤を使用するなどの方法があります。
雑草対策に適した薬剤の種類
・液剤タイプ(茎葉処理型)
雑草がすでに生い茂ってしまった場合に速効性があり、雑草のみを処理できて
土壌に浸透もしないので使いやすいです。
・粒剤タイプ(土壌処理型)
雑草が生え始めの処理や、予防に向いています。速効性はないですが長時間の効果あります。
・ハイブリットタイプ(茎葉処理・土壌処理型)
速効性と持続性の効果を併せ持っています。
害虫は、雑草が多い場合や乾燥が続くと発生しやすくなります。
秋ジャガに発生する代表的な害虫は、アブラムシ、ヨトウムシ、オオタバコガ、テントウムシダマシ(ニジュウヤホシテントウ)、センチュウ類などの害虫がいます。
・アブラムシ
病気を媒介することがあり、ウイルス病を伝染させる可能性があります。
葉の裏で吸汁するので、葉の萎縮、生育阻害を引き起こす。
体長1、2mmの小さな虫で、一年を通して発生し葉などの汁を吸って増える。
短期間で増殖する厄介な害虫です。
対策方法は、見つかった場合はその葉は処理して、被害を受けた近くにマルチングするなどして対策します。
発生初期にしっかり駆除することが大事です。薬剤などを用途に合わせて使用しましょう。
・ヨトウムシ
夜に出てきて様々な植物などに発生し食害する。成長すると昼間は土の中に隠れ、夜に活動しはじめる。
成虫のヨトウガは、葉の裏に卵を産み付ける。
対策方法は、葉の裏に大量に卵を産み付けるため、葉の裏をまめにチェックしましょう。
見つかった場合はその葉は処理します。
葉に被害が出ても見つからない場合は、土の中を探ってみます。見つけたら駆除する。
薬剤などを用途に合わせて使用しましょう。
表面に細い毛が生えている蛾の幼虫。
成虫は大量の卵を産み、とても繁殖力の強い害虫。
対策方法は、被害場所をチェックし見つけたら駆除する。防虫ネットなどで成虫の飛来、
産卵を防ぎましょう。薬剤などを用途に合わせて使用しましょう。
・テントウムシダマシ(ニジュウヤホシテントウ)
テントウムシではあるが、一般的に知られているテントウムシとは違う害虫。
一見似ているが、背のホシの数が多く色も少しくすんでいる。(名前の通り黒斑が28ある)
本来のテントウムシは、アブラムシを食べてくれる農業にとっては
友好的な虫(テントウムシはアブラムシ以外食べない)だが、テントウムシダマシはナス科の野菜の葉を好んで食害する。
※ちなみに、ナス科の葉を好むのになぜジャガイモの葉を食べるのかというと、ジャガイモはナス科に分類されているからです。サツマイモとサトイモはナス科ではないです。
対策方法は、幼虫・成虫ともに葉の裏に棲みつくので見つけたら駆除する。
薬剤使用の際は、葉の裏を重点的に散布していくと有効的です。
周辺に昆虫などがいれば食べてくれたりする可能性もあります。
・センチュウ
野菜の根に穴を開けて侵入する。
作物の生長が遅くなったりするため収穫量に影響する。
傷口から病原菌が入ると、立ち枯病などの病気が発生する場合がある。
対策方法は、連作はしないことです。土壌環境のバランスが崩れて病害虫が発生する可能性があります。
一度発生した場合は、土壌を消毒する、土を入れ替えるなどしましょう。
マリーゴールドを一緒に植えるのも1つの方法です。
マリーゴールドは植物のお医者さんと呼ばれるほど、コンパニオンプランツの中でも
優秀です。
いろんな植物との相性がよく、葉のにおいに防虫効果があります。
根の分泌液は、土中の害虫を遠ざけるので厄介なセンチュウなどに効果が見込めます。
育てたい・育てている作物との相性を調べた上で、その作物ごとにコンパニオンプランツを植えて害虫対策という方法も自然に予防ができるので、選択肢として考えてみては
いかがでしょうか。
病気は、そうか病、青枯病、灰色かび病、乾腐病、黒あざ病、指斑病などがあります。
・そうか病
かさぶたを意味していて、その名の通りジャガイモの表面に丸い5~10mm程度のかさぶた状の病斑ができます。
そうか病になると、市場性を損ない商品化ができなくなる深刻な病気です。
ただ、皮を厚くむけば食べることはできます。味も健全なものとほとんど変わらないです。収穫量にもほとんど影響はしません。
※弱酸性~アルカリ性(pH6.5)以上の土壌で多発するため、石灰を撒く際には量には注意しましょう。
・青枯病
発見したら他の株に伝染しないように、すぐに株ごと抜いて処分しましょう。
病気は、酸性土壌、窒素成分の多い肥料の使い過ぎ、土壌多湿、排水不良などで
なりやすくなります。
症状に合わせて薬剤を散布するなどして対処しましょう。
※他の作物の【害虫対策】にも害虫の種類、特徴、対策などを書いていますので
そちらも参考までに見ていただけたらと思います。
薬剤には様々なタイプがあるので、その時の状況と用途に合わせて作物への影響を
考慮した上で使用することが重要です。やみくもに使うことはやめましょう。
もちろん何も使わずに雑草を処理し、害虫や病気を防止・管理していけるのが
望ましいですが、実際のところなかなか難しいと思います。
困ったときや手に負えない場合には、薬剤を正しく使用して助けてもらうのも
1つの方法かと思います。
病気や害虫による大きな被害を防ぐために重要なのは、生育環境を適切に維持する
ということです。
日当たり、水はけ、風通しは良好か、水やり、肥料の量は適切か、肥料や土に問題は
ないか、など挙げればキリがないほどありますが、適切な管理を行い大事に育てた野菜を守ってあげましょう。
ここまで、ジャガイモ(秋ジャガ)の栽培方法と育て方に関して書いてみました。
農業の先輩方の様々な経験やアドバイス等を、参考にさせて頂き学ばせてもらい
書かせて頂きました。
是非、これから農業を始める方や興味をお持ちの方に読んでいただけると幸いです。
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週末農業日記として、農業に奮闘する様子を紹介しているので読んでいただけると幸いです。